ビジネスコラム

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【プロ監修】DX人材の採用戦略、成功のカギはチームの作り方

新型コロナウイルス感染が拡大し、リモートワークなどの動きも加速するなか、近年、多くの経営者の関心を集め、企業が取り組みを開始しているDX(デジタルトランスフォーメーション)。デジタル技術の活用やシステム開発などを通じてDXを推進するには、DXを推進することができる人材の確保が不可欠です。 ところが調査データによれば、日本企業の74%がDXに着手しているものの、人材不足がDX推進の障壁になっており、人材確保・育成を喫緊の課題と感じる企業が多いという情報が浮かび上がっています(株式会社電通デジタル「日本における企業のデジタルトランスフォーメーション調査(2020年度)」)(※1)。 それならばとDX人材の採用を考えるところですが、適切なDX人材を採用するには「DX人材とはどういう人材なのか」「DXを推進するには、どのようなスキルを持つ人材を採ればいいのか」を明確にしておく必要があり、この“定義付け”で足踏みしている企業も少なくないのが実状です。 そこで本記事では、IT化・DX化を推進したい企業の採用支援を得意とするプロ人材が、DX人材の採用やDX人材に必要なスキル要件について解説いたします。

※本コラムは、DX・IT・新規事業のHRプロフェッショナルが解説しています。

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1.なぜDX人材の採用は難しいのか?

そもそも、企業においてなぜDX人材の不足という事態が起こるのでしょうか。そして、DX人材の採用が難しいのはどうしてなのでしょうか。大きく分けると、3つの要素が影響していると考えられます。 DX人材が採用できない理由

1)必要とするDX人材像が明確になっていない

経済産業省が2018年12月にとりまとめた「DX推進ガイドライン」では、DXを下記のように定義しています。

  • 「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

つまり、DXとは単なる情報化やデジタル化の推進にはとどまりません。生産性向上・業務改善に向けたDXもあれば、新規事業としてのDXまで本当に様々。当然、DX人材像はそれら何をやるのかに応じて変わります。 そのため、「このDXを社内で実現・推進するにあたって、どのような人材が必要か」と聞かれたとして、その要件を具体的に挙げるのは、決して容易なことではないはずです。この要件定義、すなわち求める人材像の明確化の部分でつまずいてしまっている企業が少なくないのです。 もしかしたら、求めるDX人材は社内にすでにいるかもしれません。けれど、DX人材の要件定義ができていない企業では、そうした人材を発掘することもできません。大企業では、人事部門が社内の詳しい人材情報を把握していないこともあります。

2)幅広いスキルを有する“理想のDX人材”を求めすぎる

企業がDXを推進するには、後述するようにさまざまなスキルが必要とされます。DX人材を採用する際、こうしたスキルをすべて有する人材を探そうと考えてしまうのもわかりますが、幅広いスキルをすべて兼ね備える“理想のDX人材”というのは希有な存在です。 また、前述のように様々なDXプロジェクトが社内で展開されていくことを考えると、それら含めて全てを兼ねる人材を見つけることはチャレンジングです。 仮に、それだけのスキルを有する人材を探すことができたとしても、採用には相応の費用が必要となります。何より、社外から入ってきてすぐに即戦力として活用できるとは限らないというのが、DXの難しいところです。

3)DX人材が活躍できる環境が整っていない

起業・独立しスタートアップとしてサービス開発などを行い、さまざまな領域に参入する企業も増えている昨今、IT人材の獲得競争は激しくなっています。加えて、DX推進の加速に伴いこれまでIT人材採用に積極的でなかった大手企業からもIT人材採用の動きがさらに高まり、IT人材自体が不足しがちな状況が続いています。 そして、企業の人材採用戦略においてはまだまだ正社員が中心となっていることが多いですが、IT企業やスタートアップ界隈では起業・独立やフリーランスといった柔軟な働き方のを選ぶビジネスパーソンも増えてきています。 そうした状況下で、正規雇用や人事制度にとらわれない働き方を選ぶ優秀な人材と、既存の給与体系や人事制度の範囲内で正社員を採用しようとする企業のミスマッチが生じ、結果としてIT企業やスタートアップ企業に人材を奪われてしまうことは珍しくありません。 DXのプロ人材

2.DX人材に必要なスキル要件とチーム作り

「DX人材」というと、AIやIoTといったデジタル技術を活用できる知見、データサイエンティストやデータコンサルタントなど情報を扱うことができる技術的なスキルを有した人材を想像する方も少なくないでしょう。確かに、デジタル技術を有する人材、情報・データに関する知見をもつ人材も必要です。 しかし、DX推進に必要となるスキル要件は技術面のみにとどまりません。DX人材に求められる標準的なスキル要件とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。 DX人材のスキルとチーム作り

1)マネジメント

DX推進プロジェクトを成功に導くためには、プロジェクトのマネジメントをすることができる人材が必要です。 「プロジェクトマネジメント」と聞くと、システム開発やサービス立ち上げにおけるプロジェクトマネジメントを想起する方も多いでしょう。実際、DX推進においても、ミッション・ビジョン・バリューや計画の策定、情報管理や進捗確認といった管理業務も行うことになります。 ですが、マネジメントにおいて最も重要なのは、DX推進におけるステークホルダー(利害関係者)を動かすことのできる人材です。DXを推進するためには社内の経営層や事業におけるキーパーソンを動かし、DX推進の価値提供先となる事業部門や現場の協力を得る必要がありますし、DXを推進するプロジェクトメンバーも動かす必要があります。 この「人を動かす」ということが、DX推進においては核となるタスクであり、このタスクを担う人材こそが、DX推進に最も重要な中心人物といえます。

2)ビジネス戦略

DX推進の目的は企業によって異なりますが、共通しているのはビジネスモデルの創出や変革です。そのため、単にIT技術に関する情報や知識をもっているというだけでは不十分で、ビジネス構築やマーケティング、製品・サービス開発などに関する情報や知見をもつ人材が必要です。 具体的には、企業の経営や事業に対する理解、自社に関連するドメイン(事業領域)の理解をもつ人材の力が必要となり、そのビジネスを創出・活性化するために必要なデジタル化を模索することになります。

3) 技術

DX推進に際しては、データ分析やシステム開発が必要となります。そのため、そうしたスキルをもった技術系の人材が必要です。プロジェクトによっては、より専門的な知識のあるデータサイエンティストや、AI・IoTなどの高度な知識をもつ技術者などが必要になることもあります。

4)スキル要件を満たすチーム構成

これらのスキル要件は標準的なものであり、それぞれのスキルがどのくらいの割合で、どれくらいの優先度で必要とされるかというのは、それぞれの企業の状況やDXを推進する目的によっても異なります。 いずれのケースも、1人のDX人材がすべてのスキル要件を満たすことは難しいでしょう。そして、その必要もありません。それぞれのスキルをもつ人材を社内と外部から集め、DX推進チームを結成することで、十分対応できます。 「マネジメント」分野の「ステークホルダーを動かす」を担う人物は、社内の調整をスムーズに進めるために社内人材であることが必須といえます。それも、入社して間もない人物ではなく、一定期間在籍しており、社内の各部門や事業部のキーパーソンとの連携をとりやすいことが求められます。 「マネジメント」分野の「プロジェクトマネジメント」や「ビジネス戦略」分野は、社内人材を中心に登用し、人材を育成しながらビジネスへの貢献やステークホルダーとの調整を担うのが望ましいですが、必要に応じて社内人材と外部人材を組み合わせるといいでしょう。 デジタルを活用しシステム開発などを手がける「技術」分野は、外部人材の専門的な知見を積極的に取り入れることを考えたいですが、その知見を社内に蓄積することを視野に入れて、社内人材との組み合わせも有効です。 こうした具合に、社内人材と外部人材を使い分けてDX推進チームを構成することで、必要なスキル要件を満たし、DXを推進しやすくなります。

5)アジャイルなDXチーム作り

具体的にイメージするためにも、極論ですが、図のようなチーム構成はイメージできないでしょうか? アジャイルなチーム作り DX推進室のようなものを、社内メンバー+外部人材で構成、そして各事業部門から適性のある人材を選抜し、チームで各DXプロジェクトを推進する。そして、その過程でDX経験が浅いメンバーも外部人材からノウハウを吸収し、自立自走していくというものです。 DXのあり方は各社模索中だと思います。そのような中、最初から正社員のみでチームを作っていくのはリスクが高いはずです。まずは外部人材含めたアジャイルなチーム作りを考え見るのもどうでしょうか?

3.DX人材採用に向けた現実的な環境整備

DX人材が活躍する環境整備 前述では、DX人材の採用に必要なこととして、「求めるスキル要件や必要とする人材像の明確化」とともに「DX人材が活躍できる環境整備」を挙げました。本項では、「DX人材が活躍できる環境整備」について解説します。 まず考えられる「整備すべき環境」は、DX人材が魅力を感じ「この会社で働こう」と思える人事制度や契約形態です。正社員採用にこだわる人事採用戦略、何が何でも出社を求めるような企業風土、柔軟な働き方ができない制度、高度なスキルをもって行う貢献に見合わない給与形態では、人材獲得競争に勝ち人材を採用するのは難しくなるでしょう。 となれば、通常の人材と同じ給与テーブル、同じ評価基準では、採用が困難ということになります。とはいえ、DX人材の確保のために人事制度や給与体系そのものを変えるというのも、現実的には難しいと思います。変えるとしても時間がかかってしまえば、人材採用に間に合わなくなります。 そこで、現実的に考えられる対策としては、次のような内容が挙げられます。

①DXを推進するための別組織・別会社を立ち上げ、DX推進に特化した制度を適用する

②DX人材の採用に適した専門職種を設け、その専門職種のみに適用される制度を新設する

③正社員採用ではなく契約社員としての採用、または業務委託契約で仕事を依頼し、人材ごとに給与(報酬)や契約を設定する

もう一つ重要となるのが、DX人材が入社したあと、その能力を存分に発揮できるような環境づくりです。 高度な知見をもつDX人材であれば、自身のもつスキルを最大限に生かした仕事、したいと思う仕事ができることを重視するでしょう。逆にいえば、やりたいことができる会社であれば、その他の条件が高水準ではなかったとしても、その会社での仕事に魅力を感じることもあり得ます。そうした働きができるよう、制度の整備が必要です。 また、DX推進のプロジェクトは長期化する傾向があり、目に見える成果が表れるまでには時間もかかります。反面、社内のステークホルダーとは衝突も発生しがちで、負担感の大きい仕事です。こうした負担によってDX人材が心折れてしまうことのないよう、がんばっているDX人材を評価・支援する雰囲気や制度も、企業の人事担当者におかれましてはぜひ考えてほしいと思います。 これらのことは、人事部門だけですべてカバーできるものではなく、経営層の積極的な関与が不可欠です。経営層がDXに消極的であったり、デジタルやITの活用、システム開発などに関するリテラシーが不足していると、DX人材の採用はうまくいきません。

4.自社育成か外部登用か?

自社育成か、外部人材か DX人材を確保しようと考えたとき、その選択肢は「社内の既存人材を登用する、または正社員を採用し、社内で育成・能力開発する」と「外部のベンダーや人材に業務委託契約で入ってもらう」の2つに大別されます。DX人材を社内に求めるのと外部に求めるのとでは、どちらがいいのでしょうか

1)理想は社内で育てること

DX推進で得たいのは、企業の競争優位性です。長期にわたって優位性を確保しようと考えるならば、DX人材を社内で育成し、その能力を開発しノウハウを蓄積する体制を整備するというのが理想でしょう。すべての人材を外部に委ねるのでは、社内に情報や知見を残すことができず、中長期的に企業の競争力への影響も懸念されます。 特に、ステークホルダーを動かす中心人物は「この存在がなければDX推進プロジェクトがうまくいかない」という存在であり、社内の人を動かすというタスクから考えても社内の在籍期間も一定以上は必要でしょう。となれば、社内に求めるのが望ましい姿です。 とはいえ、DX人材を育成できるだけのノウハウが社内になければ実現は難しいですし、育成するとしても時間がかかります。正社員を採用するには費用がかかりますし、優秀な既存人材であればDX推進に登用しようにも事業部が手放さない可能性も……。

2)外部人材も活用したアジャイルなチーム作り

外部人材を登用する大きなメリットは、アジャイルなチーム作り。優秀な専門家を、スピード感をもって、コストパフォーマンスよく、確保できる点にあります。最先端のデジタル技術、システム開発手法、すぐれた製品・サービスなどに関する情報や知見を、スピーディーに確保できるのは大きな武器になります。 ただし、あくまで外部人材であるため、本当の意味での企業の課題の理解や、グロースに貢献するようなコミットメントを求めようとしても、限界はあります。「ここから先は踏み込めない」という領域も出てくるでしょうし、社内のステークホルダーを動かす必要のある場面では社内人材ほどのパフォーマンスを発揮できないでしょう。 とはいえ、DX領域のすべてに幅広く精通した人材を社内育成だけでまかなうのは現実的に無理ですから、外部からの登用は何らかのかたちで必要になるはずです。 このように、社内人材にも外部人材にも、それぞれのメリット・デメリットがあります。そのメリットの効果を最大化し、DXを推進するためには、社内人材と外部人材を必要に応じて使い分け、前述のように「社内人材と外部人材でチームを組むこと」が有効です。

まとめ

DXの領域は非常に幅広く、その推進に必要なスキルも多岐にわたります。そうしたスキルをすべて兼ね備える“スーパーマン”を採用するのは難しく、現実的に進めるためには社内の人材と外部人材でチームを組むのが最善です。 そのチームにどのような人材が必要かといった人材要件や、社内と外部をどのように組み合わせるかといったことは、DX推進の目的によって異なります。目的やプロジェクトのフェーズ、必要となるシステム・サービス開発などの状況に応じて、体制を柔軟に組み替えていくという選択肢もあります。 いずれの場合も、DX人材の活躍を促し、本当の意味でDXを推進するためには、経営層の理解と支援が重要です。DX推進チームのトライアンドエラーや社内での動きをサポートするようなDX推進のリードが求められます。 新型コロナウイルスの感染拡大により、既存ビジネスや人材採用に影響が生じている企業も少なくないなか、社内外人材によるアジャイルなDXチーム作りで競争優位性を確保し、今後のビジネス展開の展望が開けていくことを願っています。

監修者プロフィール 峰久 泰義(ミネヒサ ヤスヨシ)

エンジニアとしての経験、新規事業責任者の経験を積んだのち、事業成長・新規事業創出に向けた採用育成責任者として経験を積む。 その後HRコンサルティングを行う株式会社MISORAE を創業。IT化・DX化・新規事業創出を進めたい企業やスタートアップのHRプロフェッショナルとして従事。2021年4月よりJMDC人材戦略室長を兼任。


(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

DXのプロ人材 出典 ※1:日本企業のDXはコロナ禍で加速するも推進の障壁はDX人材の育成(電通デジタル) https://www.dentsudigital.co.jp/release/2020/1218-000737/

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