ビジネスコラム

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物流DXとは?物流業界の課題から見えるDX推進の取り組み事例

新型コロナウイルス感染症の大きな影響を受けた業界の一つといえば、物流業界ではないでしょうか。海外との取引ができなくなり、輸送量が激減した企業も少なくありません。一方EC利用者の増加に伴い、個人への配送が急増。配送ドライバー不足などのトピックが、世間でも注目されています。

こうした中、物流業界でも重要性が高まっているのが「DX(デジタルトランスフォーメーション」。DXを簡単に言えば、デジタルを活用してビジネスを変化させること。ここ数年は経済産業省でも、日本企業のDX推進を後押しする取り組みを行っています。

しかし物流業界は小規模な事業を営む会社が多く、IT化が遅れていると言われます。「どう物流DXに取り組んでいいかわからない」という経営者の方も多いかもしれません。また配送や輸送に多くの会社が関わるなど、物流業界ならではの課題もあります。

そこで物流DXの基礎知識とあわせて、物流DX推進の障害となりやすい課題や、物流DXを実現している企業の事例をまとめました。

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1.物流DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

物流DX(デジタルトランスフォーメーション)とは_みらいワークス

1)物流DXの定義とは

DXは「Digital Transformation」(デジタルトランスフォーメーション)の略で、日本語では「デジタルによる変革」と訳されます。なお英語では「Trans-」を「X」一文字に略することが多いため、DXという略名で表記されます。

日本企業のDX推進に取り組む経済産業省では、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義づけています(※1)。

物流DXでは、「配送・輸送」「保管」「荷役」「流通加工」といった事業の各プロセスにおいてAIなどのデジタル技術を活用。その上で新たな事業やサービス、ビジネスモデルなどを創出することを言います。例えば「AIで倉庫の利用動向を予測できるシステムを導入して、他社より迅速に配送できる新たなサービスを開発する」というイメージです。

2)物流業界に物流DXが求められている背景とは

実際には「システムがあってもデータを活用できていない」「イレギュラー対応が多く、既存システムが複雑化しすぎている」といった会社も多いようです。

こういった問題は物流業界に限らず、多くの日本企業が抱える問題だと経済産業省では指摘しています。特に多いのが、既存システムが部門ごとにバラバラに存在するため、全社でのデータ活用ができないケース。これでは経営者がDXを推進しようとしても、既存システムの問題で頓挫してしまいます。

こうした問題によって日本のDX推進が遅れると、2025年以降に年間最大12兆円の経済損失が出ると経済産業省では予測しました。これは「2025年の崖」と呼ばれています(※2)。この「2025年の崖」は、物流業界でも今後懸念されています。

さらに物流業界特有の課題もあります。例えばサプライチェーンの構造上、配送・輸送、倉庫、流通加工などで多くの会社が事業に関わることが一般的です。こうなると、誰がIT推進のリーダーになるかが不明確、という課題も出てきます。

また輸送など「物を運ぶ」というビジネスがメインのため、業務のデジタル化に取り組む機会がこれまで少なかったのではという声もあります。AIやロボットを活用して業務効率化を実現した物流系企業もありますが、多額の投資が必要となるため大企業に限られるのが現状です。

しかし新型コロナウイルス感染症をきっかけに社会は大きく変わっています。物流業界においてもDXを推進していくことが重要。輸送や配送事業を行う会社も、倉庫を運営する会社も、従来の業務やビジネスでは市場や顧客の変化に対応できません。特にスピーディーに対応するには手動では無理があり、デジタルを活用した変革が必須です。つまり物流DXの導入が求められています。

DXのプロ人材

2.物流業界が抱える課題と、物流DXによる取り組み事例

物流業界が抱える課題と、物流DXによる取り組み事例_みらいワークス

物流DXを推進するには、まず会社として抱えている課題を明確にすることが第一歩です。ここでは物流業界で多くの会社が抱える課題をもとに、物流DXによってどんな解決策があるか実際の事例をまとめました。

1)EC利用急増に伴う商品管理の複雑化

富士経済の調査によると、2020年の通販・EC市場規模は137243億円。前年比で約17%も増加していると言います(※3)。コロナ禍による外出自粛の影響が大きいのではないでしょうか。

EC利用の急増は、物流にも大きな影響を与えています。企業向け輸送・配送が減る一方、個人宅への配送が増加。小口配送の急増したことで、倉庫での商品管理業務が複雑化しているという課題も出てきています。

こうした課題解決に役立つのが物流DX。例えば京セラ株式会社は、物流倉庫の管理にモバイルアプリを導入し効率化を実現した事例。40万点の在庫を倉庫に持つ京セラでは、毎日の棚卸業務を紙ベースで行っていました。そこでデジタルにシフトして、在庫管理業務の効率化に成功したと言います(※4)。

またこの事例ではモバイルアプリで入力されたデータはクラウドに蓄積され、管理者へリアルタイムで共有されます。現場での手間が減るだけではなくチェック業務の簡略化にもつながり、業務プロセスの変革を実現したそうです。

2)トラック積載効率の低下

小口配送が増えて荷物の多品種・小ロット化が進めば、今後さらにトラック積載効率の低下につながるという声もあります。国土交通省の資料によると、営業用トラックによる積載効率は年々低下。2018年の時点ですでに4割に満たないというデータもあります(※5)。このデータによれば、トラックが積載できる容量の6割は無駄になっていることになります。

積載効率の向上においても、物流DXが期待されています。例えばNECの事例。NECでは3Dセンサーカメラを活用して、積載率を可視化できるシステムに取り組んでいます※6)。積載率が可視化できれば、積載率の低いトラックと荷主をマッチングしやすくなるわけです。さらにAIなどを導入すれば、業務効率化だけではなく新たな荷主(顧客)の開拓につながるかもしれません。

3)配送ドライバーなどの人手不足

物流業界で大きな問題となっているのが人手不足。国土交通省の資料によると、2018年の時点で全職種の有効求人倍率1.35に対して、配送ドライバーは2.68※7)。人手が全く足りていないことがわかります。これはドライバーの高齢化が進んでいるという理由や、低賃金・長時間労働などの労働条件が影響していると言われています。

小口配送の急増により、今後さらに配送ドライバーの人手不足は深刻化することが予想されます。ここでも、デジタルを活用した物流DXによる解決が期待されています。

例えばソフトバンクが出資しているCBCloud株式会社では、フリーランスの配送ドライバーと荷主をマッチングするシステムを提供しています※8)。この事例はUberのように荷主が依頼をかければすぐにドライバーとマッチングが可能。そのため迅速な配送が実現するというわけです。全国に26万人と言われるフリーランスドライバー。この人材を有効活用できるシステムが普及すれば、ドライバー不足の解消につながる可能性もあります。

またこの事例では、中間業者をはさまず直接荷主から依頼を受けます。そのため、フリーランスドライバーにとって単価が上がるメリットもあると言います。

4)燃料などのコスト高騰

物流業界で今後リスクとなりうるのが、燃料などのコスト高騰。原油価格は2020年の新型コロナの影響によって下落した時期もありましたが、過去に高騰する時期も何度かありました。さらに輸送・配送に必要なトラックやタイヤなどのコストも上昇傾向と言われ、物流業界全体でコストの値上がりが懸念されています。

こうした課題解決につながる物流DX事例のひとつが、Enevo Japan株式会社の提供するサービス(※9)。この会社では、積み荷の内容量を可視化できるセンサーを独自開発しました。さらに遠隔で監視できるシステムを構築しています。

このシステムによって管理者は最も効率のいい配送ルートをドライバーへ指示でき、燃料コストの節約が期待できます。現在さまざまな配送・回収サービス業者に導入されています。ある配送サービス事業を手掛ける企業ではこのシステムを活用し、新たな事業へ取り組むことも検討しているそうです。

他にも、産学共同で取り組む事例もあります。例えば佐川急便株式会社では、東京大学大学院などと共同で、AIや電力データを活用して再配達を減らす実証実験を行っています(※10)。

4.まとめ

新型コロナウイルス感染症の影響も大きく、海外輸送の減少や国内小口配送の急増などの課題を抱える物流業界。経済産業省が懸念する「2025年の崖」と言われる中、輸送や配送、在庫管理といった業務やビジネスモデルを変革させるべき時期が迫っています。

こうした中注目されているトピックが、AIなどを導入してビジネスやサービスを変革する「物流DX(デジタルトランスフォーメーション)」。あまりデジタル化を進めてこなかった企業こそ、物流DXで事業や業務プロセスを大きく変化できるチャンスがあるとも言えます。

一方で、「既存システムをどう変えていいかわからない」「ITやデジタルに詳しい人材がいない」という悩みを持つ方も多いようです。最近では、物流業界に特化したITコンサルを手掛けるところも出てきています。

社内だけで物流DXを推進するのは、やはり厳しいのが現実。スムーズに物流DXを実現するためにも、他社の事例も参考にしてどう進めるか早急に検討しましょう

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

DXのプロ人材 出典 ※1:デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX 推進ガイドライン)(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181212004/20181212004-1.pdf

※2:D X レポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~(経済産業省) https://www.meti.go.jp/press/2018/09/20180907010/20180907010-1.pdf
※3:【コロナ禍の通販・EC市場】2020年は17%増の13.7兆円、2021年は10%増の15兆円超と予測(impress  BUSINESS MEDIA)
https://netshop.impress.co.jp/node/8745

※4:京セラが月2万円で実践した、現場主導のDXとは? − 巨大倉庫の棚卸業務プロセスを効率化した、ノーコードなアプリ活用(TECH+)
https://news.mynavi.jp/kikaku/20200828-1246877/

※5:物流分断・積載率低下、解決へ不可欠なIT活用とは(LogisticsToday)
https://www.logi-today.com/365594

※6:Logistics2030へ加速、NECが積載率可視化公開へ(LogisticsToday)
https://www.logi-today.com/366433

※7:トラック運送業の現状等について(国土交通省) https://www.mlit.go.jp/common/001242557.pdf
※8:ドライバーの労働環境と社会的地位を変える、物流版Uberの正体とは?(Future Stride)https://www.softbank.jp/biz/future_stride/entry/iot_5G/20191129/
※9:Enevoセンサーを活用した液体配送サービス【株式会社 FUKUDA様】(Enevo Japan株式会社) https://www.enevo.co.jp/articles/enevo-fukuda.html
※10:電力データとAIで宅配便の再配達を削減 佐川急便など実証実験(Response) https://response.jp/article/2020/07/12/336495.html

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