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【プロ監修】企業改革を成功させるステップとは?失敗理由から見えるポイントも解説

先行きが不透明で将来の予測が困難である「VUCAの時代」にあって、日本企業もその社会に迅速・柔軟に対応するべく、改革の必要性に迫られる会社が増えています。

とはいえ、一言で企業改革といっても、具体的にどのようなプロセスでどのように進めていけば企業改革が成功するのかといえば、その答えは一様ではありません。

本記事では、企業改革や課題解決に関する多くのプロジェクトに長年携わるプロフェッショナル監修のもと、企業改革の概要や求められる背景、企業改革の成功につなげるためのポイントを解説します。

1.そもそも、企業改革とは?

1.そもそも、企業改革とは?

「企業改革」とは、文字通り「企業」を「改革」するための取り組みで、「組織改革」といわれることもあります。具体的には、企業が存続・成長し続けるために、その組織の体制や仕組み、風土などを抜本的に変革することを意味します。

「企業改革」が必要とされる状況はさまざまですが、その根本にある理由としては、企業という組織に何らかの課題があり、改革を通じて課題を解決しなければ企業の維持・持続的成長を遂げることができないから、とまとめることができるでしょう。

会社の課題は社内の要素から生じることもありますが、昨今は社会や市場の激しい変化という外的要因も大きく影響しており、「変化への適応」という観点からその必要性が叫ばれることが多くなりました。

少子高齢化に伴う労働人口の減少、働き方改革が求められる時流、新型コロナウイルスの感染拡大などは、特に大きい外部要因として挙げられるでしょう。

近年は、世界各国でDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する動きが見られ、日本も例外ではありません。
先端的なデジタル技術・サービスの活用によって会社組織やビジネスを変革することを目的とするDXは、企業改革の手段のひとつに分類できます。

企業にとって、いつ改革が必要になるか、どのような改革が必要であるか、ということは、企業がおかれている状況や企業が抱える課題によって異なります。企業改革に取り組むにあたっては、マッキンゼーが提唱する「組織の7S」フレームワークを導入・活用し、組織のあり方を分析するのも有用です。


2.日本における企業改革の現状

2.日本における企業改革の現状

前述のとおり、企業改革の目的や導入手法は各社によってさまざまです。そして、企業改革の取り組みがどの程度なされているか、改革に成功しそのメリットをどの程度享受できているかといったことは、外部からではなかなかわかりません。

しかし、企業改革と関連の深いDX推進については多様な調査が実施されています。2020年12月に経済産業省が発表した「DXレポート2(中間取りまとめ)」(※1)をみると、2019年時点で日本におけるDXの取り組みは想定以上に遅れていることが明らかになったと示されています。

また、デロイト トーマツ グループが2020年2月に発表した「働き方改革の実態調査2020」(※2)では、「既に働き方改革を実施した」または「現在推進中」と回答した企業が全体の89%である一方、働き方改革で「効果が感じられた」または「部分的にではあるが効果が感じられた」と回答した企業は全体の53%にとどまっています。

このように、日本において「改革」と名のつく取り組みはさまざま行われつつあるものの、その進展や効果は芳しくないというのが実状。多くの企業が、変化し改革を実現するために苦労している様子がうかがえます。

3.日本の企業が改革に苦労する理由とは?

3.日本の企業が改革に苦労する理由とは?
企業改革、組織改革、働き方改革……「改革」と名のつく取り組みの内容は、会社によっていろいろなケースがあり、改革を思うように進めることができない原因も多種多様です。しかし、変革が困難な状況にある企業によく見られる傾向には、いくつかのポイントがあります。本章では、そのポイントを解説します。

1)変化を敬遠する

成功するベンチャー企業は、目標に向かって行動を進めつつ検証と改善を重ね、あるべき姿に向かって常に変わり続けます。その一つひとつは小さな変化かもしれませんが、それを続けていった末に、大きな変革とそれによる成果を得られるのです。

他方、長い歴史のなかで一つのビジネスを軌道に乗せ定着させてきたような会社では、それを延伸させることに注力し、変化を敬遠する傾向が見られることが珍しくありません。その結果、いよいよ立ち行かなくなり「改革」に重い腰をあげることになれば、短期間で一気に大きく物事を変える必要が生じ、その難易度は上がることになります。

2)時間や予算が足りない

現状の課題を分析・把握したうえでなすべきことを整理し、組織体制を変える、ビジネスのネットワークを全面的に変える、事業運営のプロセスを見直すといったことを実現する企業改革には、時間もお金もかかります。

しかし、前項で例として挙げたように、短期間で大きく変える「改革」が必要になるケースでは、本来確保すべき期間を確保できず、改革を成し遂げる負荷が非常に大きいものになります。

その負担をカバーする予算編成も難しいとなれば、予算の制約を受けてプロジェクトのサイズが小さくなるにもかかわらず、乗り越えるべきハードルは高いままに。そうなれば、改革の成功が難しいものとなるのは必然でしょう

3)ステークホルダーの調整が行き届かない

企業には多種多様なステークホルダーが存在します。企業を改革するとなれば、そのステークホルダーと協議を重ねて合意を形成するプロセスが不可欠です。しかし、短期間で実現することを求められるケースでは合意形成に時間をかけることができず、組織にひずみを生むことにつながってしまうことも。

時間もお金も足りない企業改革プロジェクトにはさまざまな無理が生じがちです。ステークホルダーとの合意形成は、企業経営において重要なポイントである分、その“無理”がたたったときの悪影響は重大です。

4.企業改革を成功させる8つのステップと実践ポイント

4.企業改革を成功させる8つのステップと実践ポイント
企業におけるリーダーシップ論の権威として知られる、ハーバード大学ビジネススクールのジョン・コッター名誉教授は、その著書で「変革の8つのステップ」を提唱しています。

これは、企業が大規模な変革を成し遂げようとしてつまずく理由・原因を乗り越え、変革を推進するために有効とされるポイントや進め方を、8つのステップにまとめたものです。

コッター氏は、企業が真に改革を実現するためには、この8つのステップは第1ステップから順を追って進めること、どのステップも省略しないことを強調しています。これは、企業改革を無理なく本質的に実現するためには適切な期間が必要であることにも通じるでしょう。

グローバルリーダーを対象に変革的リーダーシップを指導するコンサルティング会社も手がけるコッター氏のフレームワークは、企業改革を進めようとする経営者や担当者にとって参考になるものです。本章ではそのステップのエッセンスを解説します。

1)危機意識を高める

市場や競合他社の状況を分析・整理し、それを社内に提示することで、社内の危機意識を高めます。これは、変革によって自社の課題を解決し持続的成長を遂げる道を見いだすための最初のステップになります。

2)変革を推進するためのチームを構成する

変革をリードする人材を集め、チームを構成します。チームメンバーには、変革を主導するためのスキルやパワーが求められます。企業としては、チームが存分に変革をリードできるよう、一定の権限を付与することが望ましいです。

3)変革のビジョンと戦略をまとめる

変革を通じて会社組織や社員がどうなるべきか、なぜその変化が求められるのか、なぜそのために努力する必要があるのか……従業員やステークホルダーに説明できるようなビジョンをまとめ、それを実現するための戦略を打ち立てます。

4)ビジョン・戦略を周知する

前項で設定したビジョン・戦略を、従業員やステークホルダーに周知します。さまざまな手法を駆使して継続的に行うことが必要で、従業員に期待される行動をチームメンバー自らが規範的に示すことも大切です。

5)人材の自発的行動を促す

従業員が失敗や変化のリスクを恐れていては、変革はなし得ません。従業員が変革実現のためにと自発的に行動できるよう、それを阻む環境を取り除き、組織構造やシステムを変革します。

6)目に見える成果を短期的に生む

目に見える成果を短期間で挙げ、その成果に貢献した人を報奨します。これによって従業員が変革の意義を感じられるようになり、意欲が向上します。短期間で達成できるよう、確度の高く小規模な目標を考えるのがポイントです。

7)変革をさらに進める

短期成果による意欲向上をてこに、企業改革の本質的な目的に向けて、組織構造やシステム、社内制度などの変革を進めます。変革推進に必要な人材採用や人材育成なども含まれます。

8)変革を根付かせる

変革によって実現したものと、企業が発展したことの関係を明確に提示し、変革することを企業文化として定着させます。

5.まとめ

社会情勢が変化すれば、顧客ニーズもビジネスインフラも変わります。その変化に適応しなければ、企業は生きのびることも成長を遂げることもできません。変化の激しい今の時代は、企業も迅速に変化することが求められるのです。昨今、多くの企業が「改革」の必要性に迫られているのは、その時代の要請の延長線上にあるものといえます。

しかし、企業が大きく変化しようとすれば、さまざまな衝突が生まれ、その難易度は高まります。反対に、社会や市場の変化を日々感じとり、自社も常に変わり続けるといったように、時間をかけて地道に少しずつ変化できていれば、難易度の高い「改革」を求める必要なく、現実的に大きな変革を生みやすくなります。

従来の日本企業では、「昨日と同じ今日があり、今日と同じ明日がある」という前提でビジネスが成立していた組織が大多数でした。しかし現在は、昨日と同じ今日が来るとは限りません。これまで安泰であった事業が、気ついたら陳腐化してしまっているという事例も散見されます。

企業として、マーケットや時代の変化を直視して、自社のビジネスモデルが最適かどうか、自社の状況を適切に評価し、最適なものでなければすぐに変化する、といった動きを定期的にとれば、「改革」の必要性に迫られるまでもなく、企業は存続し、成長を続けていくことが可能になります。この日々の姿勢こそが、企業経営において合理的なアクションといえるでしょう。

監修者プロフィール
S.T

大手飲料会社に約30年間勤務し、その間、営業企画、SCM、CM、営業、経営企画、IT部門にて、実務からマネジメントまで幅広く経験。
在職中はルーチン業務に加え、企業変革に関わる多くのプロジェクトや課題対応をその中心として担う。
大手飲料会社での経験を用いて中小企業の成長に貢献したいと考え、2019年にファンド保有の食品会社に転職し経営企画を担当。
その後オーナー系の中堅食品会社で業務改革推進を担当しDXを含む企業改革に挑戦しながら、系列のミネラルウォーター製造会社の事業本部長を兼務。
現在は、自身で創業したモノづくり系プラットフォームを構築する会社経営とフリーランスコンサルタント活動を兼務しながら、後継者不在の中小企業承継を進めている。

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)


出典
※1:デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会の中間報告書『DXレポート2(中間取りまとめ)』を取りまとめました(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201228004/20201228004.html
※2:「働き方改革の実態調査2020」の結果を発表(デロイト トーマツ グループ)
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/news-releases/nr20200205.html

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